2023-01-01から1年間の記事一覧
私はその日、ヨナと仲直りしようと決心していた。 誕生日でもないのにケーキを買って、ヨナの好きな料理を作って、ヨナの帰りを待つ。 ご機嫌取り、あからさま過ぎたかな? 「ただいま」 「おかえりっ!」 私は飛びっきりの笑顔でヨナを迎えた。 ムスッとし…
「もう少し、可愛いフレームがいいんじゃないですか?」 「いりません、必要ないです。……ありがとうございました。」 私は彼の言葉を遮るように、逃げ出すように、帰ろうとして、足を止めた。 メガネ代。 仮を作るようで嫌だった。 だから、振り返ってまた彼…
「……それじゃぁ、私はこれで」 「あの、メガネなくて大丈夫ですか?」 歩き出そうとしたところで、その人が声をかけてきた。 「……あれは左目のためだけのものなので、右目は見えますから。途中で友人にでも迎えに来て貰います」 「この先にメガネ屋さんがあ…
「……あの、この人が何か?」 私にぶつかり、大丈夫かと手を取った人が男に聞く。 「こ、この女っ!……金払ってやったのに、逃げようとしてっ!……」 そう、声を荒らげたが、ハッとして周りを見渡す。 何があったのかと人が集まり掛けていた。 私の手を掴んでい…
1度辞めていた、客取りを、ヨナが使っていたサイトのアカウントを取り、再開していた。 話を聞くだけだったり、 添い寝するだけ。 ベッドインは拒否設定していた。 相手は紳士的な父親世代が多かった。 意外と話をしたいと言う人は多い。 私と同じように、何…
「この連帯保証人のところ、いのりか伯母さんのサイン貰ってもいい?」 「私が書くよ」 私はペンを取ると言われた場所にサインをする。 その後、伯母は買い出しに行ってくると店番を私に任せて出て行った。 カウンター席に2人並ぶ。 ヨナはあと少しでお店に戻…
あの夜から、約束通り、私は客を取らなくなった。 取れなくなった。 綺麗じゃない自分を再認識してしまった。 失った光。 逃げ出した私。 わざと汚して、惨めにさせて、逃げ続けた自分。 ホープ。 また私のコーヒーが飲みたいといった。 あの言葉が頭のなか…
私の処女作です。 今後公開予定の物語たちにも関係してくる軸の物語になるので、少しづつ修正しながら載せて行きます。 本家、アメブロにも掲載してあります。 BTSメンバーのお名前とイメージをお借りしています。 実在の人物とは関係ありませんので、ご承知…
2人分のコーヒーを入れて、彼の前に差し出す。 「……どうも」 2人で1口コーヒーを飲む。 「「ハア」」 同時にため息のような声を出す。私は笑いの沸点が低い。 それだけで、涙が出るほど笑ってしまっている。 「そんなに可笑しいですか?」 「ごめん……なさい……でも…
2 「綺麗よ、いのり。」 私の名前、いのり。母は韓国人。日本人の父と再婚する時、私は既にお腹の中にいた。 日本人の父には息子がいた。 5歳年上のオッパ。 私には血の繋がらない兄が出来た。 「…いのり、今日で最後にしよう?」 「…大丈夫、今日で辞めるよ。…
1 私は私が嫌いだ。 こんな風になってしまった自分も。 こんな風にしてしまった自分も。 私はふたつの顔を持つ。 昼間は伯母の喫茶店を手伝う。 事故で片目の視力はほとんど失われてしまった。それまでやっていた水泳もやめた。 メダルなんてものも取った事…
2 とぼとぼと歩く街並みは、クリスマスムード。 通りの木々にイルミネーション。 ……来年は見れないのかもしれないな。 そんな風に感じたら、スマホ取り出して、あまりしないイルミネーションをバックに自撮りなんてしてみたり…… ……ああ、はずかし。 スマホが…
1 「悪性腫瘍?」 「そう、悪性…… ……それも結構ステージも進んでる。」 「……つまりは?」 「……今夜、シオンと一緒に話そう? 今後の治療方針。」 「オッパに言うの? ……私、死ぬかもしれないって? ……無理だよ。そんなこと言ったら、オッパ……」 目の前の女医…
こんにちは。 祈里と申します。 アメブロ https://ameblo.jp/kiminomanae/ こちらでも投稿しております。 創作小説を投稿していきます🍀*゜ よろしくお願いします。