Lights:10
私はその日、ヨナと仲直りしようと決心していた。
誕生日でもないのにケーキを買って、ヨナの好きな料理を作って、ヨナの帰りを待つ。
ご機嫌取り、あからさま過ぎたかな?
「ただいま」
「おかえりっ!」
私は飛びっきりの笑顔でヨナを迎えた。
ムスッとした顔で、自分の部屋に入ってしまったヨナ。着替えて出てくると直ぐにテーブルの上の料理に目を向ける。
「今日、なにかの記念日?」
「……違う。ヨナに謝る日。……少し頑張りすぎた……」
「それで?……何を謝るの?」
「……ヨナ。……ごめん。……本当にごめん。ごめんなさい。……ヨナが言うように、もっと自分を大切にする。……もう心配かけるようなことはしない」
「……よろしいっ!……次はないからね……。さっ!食べよっ!チキンは私のモノだからね!」
「プッ」
私は泣きながら笑った。
2人で笑いあった。
また少し、穴が塞がって行く気がした。
オッパがソウルに父と職場の同僚を連れ立ってやってきた。
観光案内してくれと、前日になって言われあたふたとしていると、ヨナも仕事を休んで手伝ってくれると言う。
「ヨナー、ありがとう!」
こういうことはヨナの方が向いている。
待ち合わせ場所に着くと、先に到着していた懐かしい後ろ姿を見つけた。
私とヨナは気付かれないように足音を殺して近づく。
私は父の、ヨナはオッパの膝の裏に自分たちの膝を合わせて着く。
「あぁ!」
2人は変な声をあげて前のめりになる。
私はまた、涙を流して笑った。
「ひ、久しぶり」
私は笑いながら、オッパと父に抱きついた。
「はーい、ランチはこちらデーす」
ヨナは添乗員並に、オッパ達を案内する。
片言ではあったけれど、日本語も喋って頑張っている。
「仲直りできたみたいだな?」
オッパは私に尋ねる。
「うん」
そういうとニコーっと笑って私の髪をわしゃわしゃと撫でる。
……その笑った顔が、大好きだった。
「パパっ!?」
ヨナは目を丸くした。
「おう。……俺ももう少しでパパになる!」
ランチを父とオッパ、ヨナと私と囲んでいる時に、オッパがパパになると言った。
財布の中から、エコー写真を1枚取り出して見せる。
「ここが、目でここが口……そして、これが鼻……」
エコー写真に写る赤ちゃんの顔を細かく説明してくれる。その顔からは幸せが溢れていた。
ヨナが私の左手にそっと自分の手を重ねる。
ヨナは私の顔は見ず、オッパの話をただ聞き続けている。
広がりかけていた穴をヨナの手が止めてくれた。