なないろの虹(BTS空想小説別館)

オルペン&アミペンなARMYです。空想小説を書かせてもらっています。

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「……あの、この人が何か?」


私にぶつかり、大丈夫かと手を取った人が男に聞く。


「こ、この女っ!……金払ってやったのに、逃げようとしてっ!……」

そう、声を荒らげたが、ハッとして周りを見渡す。


何があったのかと人が集まり掛けていた。


私の手を掴んでいる人は、サングラスにニット帽、黒いマスクをしている。


男は罰が悪そうに、何かモゴモゴと言っている。


「……おじさんっ!悪いことは言わない。早く帰った方がいいんじゃない?」


「……っ!……くそっ!」


ブツブツと悪態を着きながら、男はどこかへ行ってしまった。


緊張の糸が切れたように、転んだ時の身体の痛みが襲って来る。


私は倒れ込んだまま、天を仰ぎ、痛みに涙した。


「……立てますか?」


男を追い払ってくれた人が声を掛けてくれる。


私は頷くしかできず、それでも立ち上がれずその場に上半身を起こして、座り込んだ。


着ていた服は転んだ時に汚れてしまっていた。


メガネも曲がっている。これでは、視界が歪んでしまう。


何より、こんな格好で帰ったら、ヨナに怒られる。

きっと心配させてしまう。


「どうしよう……?誰か呼びますか?……」


その人は心配そうに私を見ていた。


「ありがとうございました。おかげで助かりました。……少し休んだら、歩いて帰れますから……」


私はそう言って、曲がったメガネを直そうと外す。

すると、その人は私の顔を見て、声をあげた。


「お?……おおお?」

私はぼやけて見えない、その人を見上げた。


誰かな?

まさか、知り合い?


曲がったメガネを直そうと、手に力を加えた時だった。


ポキッ


私のメガネはいとも簡単に折れてしまった。


「「あ……」」


両手に折れた私の黒縁メガネ……


ハアと大きくため息を付いて、痛い足に力を込めて立ち上がる。


スカートに着いた砂ぼこりをはらいながら。