なないろの虹(BTS空想小説別館)

オルペン&アミペンなARMYです。空想小説を書かせてもらっています。

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「……それじゃぁ、私はこれで」


「あの、メガネなくて大丈夫ですか?」


歩き出そうとしたところで、その人が声をかけてきた。


「……あれは左目のためだけのものなので、右目は見えますから。途中で友人にでも迎えに来て貰います」


「この先にメガネ屋さんがあります。……行きましょ?」


「……いやでも、お金も持ってきてないし……」


「大丈夫。……僕があなたを買います。メガネはそのお代と言うことで」


「はい?」


そう言って、かけていたサングラスを下げて見せた。


ん?


私はぼんやりとした視界でその目を見る。


どこかで見たようなないような。

それに聞き覚えのある声。


ん?


……誰?

 

数分歩いたところに、本当にメガネ屋があった。

その人はお店の常連なのか、店に入るなりニコニコとした店員が出てくる。


「お待ちしておりました、ホソク様」


ホソク?


何か聞き覚えのある名前。

でも、誰なのか思い出せないでいた。


「……すみません。彼女のメガネをお願いしたいんですけど。」


「……はい?」

店員は不思議そうに私の方を見ている。


転んだせいで汚れてしまった衣服。改めて見てみて、恥ずかしさが込み上げて来た。


「あ、あと頼んでいたサングラス。入ったと聞いて取りに来ました」


「こちらから、お届けしましたのに。……わざわざ足を運んで下さり、いつもありがとうございます。」


2人ともニコニコと会話している。


ものすごい場違い感。


「……では。こちらにどうぞ」


視力を図らせて欲しいと店員に奥の部屋に連れて行かれた。


目のことを店員に伝える。

左目が極端に悪いので、それに合わせて欲しいと。


「かしこまりました。……フレームはいかが致しますか?」


「地味な黒のものでいいです。1番安いもので。」


「かしこまりました。少しお待ち下さい。すぐにご用意します。」


ご丁寧に対応してくれる。

なんだか、申し訳ない気持ちになってきた。


小部屋を後にして、フロアに戻る。


助けてくれた人は、店内にあるサングラスをあれこれかけては、鏡の前でポーズを取っている。


鏡越しに私に気づいて、こちらを向く。


私は軽く会釈する。


「あの、メガネ代は後できちんと払いますから……」


「……いりませんよ。さっきも言いました。あなたのお代代わりです。」


「……いや、そういう訳には……」

そう言いかけて、ふと思う。

この人は私があの男に買われたと知っている?


「……お客様、メガネが出来ました。……つけて見て貰えますか?」


「え?、あ、はい」


出来上がったメガネを掛けて、その人の顔を見る。


「……っ!」


「アンニョーン」


そう言って、その人は私が置いて行ったはずのコーヒーの瓶を顔の横で左右に動かしている。マスク越しにもニコニコしているのがわかる。


チョ・ホソク=Jhope。


思わぬ再会に心が曇った。