Lights
私はその日、ヨナと仲直りしようと決心していた。 誕生日でもないのにケーキを買って、ヨナの好きな料理を作って、ヨナの帰りを待つ。 ご機嫌取り、あからさま過ぎたかな? 「ただいま」 「おかえりっ!」 私は飛びっきりの笑顔でヨナを迎えた。 ムスッとし…
「もう少し、可愛いフレームがいいんじゃないですか?」 「いりません、必要ないです。……ありがとうございました。」 私は彼の言葉を遮るように、逃げ出すように、帰ろうとして、足を止めた。 メガネ代。 仮を作るようで嫌だった。 だから、振り返ってまた彼…
「……それじゃぁ、私はこれで」 「あの、メガネなくて大丈夫ですか?」 歩き出そうとしたところで、その人が声をかけてきた。 「……あれは左目のためだけのものなので、右目は見えますから。途中で友人にでも迎えに来て貰います」 「この先にメガネ屋さんがあ…
「……あの、この人が何か?」 私にぶつかり、大丈夫かと手を取った人が男に聞く。 「こ、この女っ!……金払ってやったのに、逃げようとしてっ!……」 そう、声を荒らげたが、ハッとして周りを見渡す。 何があったのかと人が集まり掛けていた。 私の手を掴んでい…
1度辞めていた、客取りを、ヨナが使っていたサイトのアカウントを取り、再開していた。 話を聞くだけだったり、 添い寝するだけ。 ベッドインは拒否設定していた。 相手は紳士的な父親世代が多かった。 意外と話をしたいと言う人は多い。 私と同じように、何…
「この連帯保証人のところ、いのりか伯母さんのサイン貰ってもいい?」 「私が書くよ」 私はペンを取ると言われた場所にサインをする。 その後、伯母は買い出しに行ってくると店番を私に任せて出て行った。 カウンター席に2人並ぶ。 ヨナはあと少しでお店に戻…
あの夜から、約束通り、私は客を取らなくなった。 取れなくなった。 綺麗じゃない自分を再認識してしまった。 失った光。 逃げ出した私。 わざと汚して、惨めにさせて、逃げ続けた自分。 ホープ。 また私のコーヒーが飲みたいといった。 あの言葉が頭のなか…
2人分のコーヒーを入れて、彼の前に差し出す。 「……どうも」 2人で1口コーヒーを飲む。 「「ハア」」 同時にため息のような声を出す。私は笑いの沸点が低い。 それだけで、涙が出るほど笑ってしまっている。 「そんなに可笑しいですか?」 「ごめん……なさい……でも…
1 私は私が嫌いだ。 こんな風になってしまった自分も。 こんな風にしてしまった自分も。 私はふたつの顔を持つ。 昼間は伯母の喫茶店を手伝う。 事故で片目の視力はほとんど失われてしまった。それまでやっていた水泳もやめた。 メダルなんてものも取った事…