Lights
1
私は私が嫌いだ。
こんな風になってしまった自分も。
こんな風にしてしまった自分も。
私はふたつの顔を持つ。
昼間は伯母の喫茶店を手伝う。
事故で片目の視力はほとんど失われてしまった。それまでやっていた水泳もやめた。
メダルなんてものも取った事もあった。
5歳年上の大好きなオッパは自慢の妹と言ってくれた。
血の繋がりはない。
本当に好きだった。兄妹でなければいいのにとそう何度も思った。
けど、オッパにとっては自慢の妹。
そう、兄妹でしかない。
そんな自慢の妹ももうやめてしまった。
昼間は黒縁のメガネをかけて、小さな祖母の喫茶店で静かに仕事をしている。目立たないように、存在するのかしないのか分からないくらいに。
夜になると、親友から時折メールを貰う。
客を取るのだ。
相手はセレブな男性たち。
話を聞くだけだったり、添い寝を望む客、ごくたまに、ベッドインを望む客…様々な客。
お金を貯めて、客を手配してくれている親友に性転換の手術をプレゼントする約束だった。
もうとっくにお金は溜まっているのだけど、まだ続けている。
親友にはもうやめていいと言われているけれど、私はやめたくなかった。
自分を痛めつけたかった。壊れたかった。
白く濁った片方の眼球を隠すようにカラーコンタクトを入れ、化粧もして、私は別人になる。
…この時間が、私には苦痛では無くなっていた。