Lights:2
2
「綺麗よ、いのり。」
私の名前、いのり。母は韓国人。日本人の父と再婚する時、私は既にお腹の中にいた。
日本人の父には息子がいた。
5歳年上のオッパ。
私には血の繋がらない兄が出来た。
「…いのり、今日で最後にしよう?」
「…大丈夫、今日で辞めるよ。」
親友のヨナ。女性になりたいと望むヨナ。もう充分女性なのに、どうしても転換の手術をしたいと言う。
私は親友を安心させるように、嘘を付いた。
ヨナからメモを受け取る。
いつものホテル。
私はいつものようにカラコンを入れ、ワンピースを来て、化粧をヨナにしてもらう。
そして、もう1人の自分を起動させる。
大概、ホテルの部屋には私が先にスタンバっている。
そこへ、客はやってくる。
今日の客は何を望むのだろうか…
緊張する。こればかりは慣れない。
ガチャっ。
ドアが開く音がする。
私はベッドに座って、客を待つ。
現れたのは、若い男性だった。
「うわぁっ!……誰?」
どこかで見た事があるようなないような男。
私に気づいて、驚いている。
「…えっと…何をしましょうか?」
男はキョトンとしている。明らかに目が泳いでいる。怖がっているようにも見える。
最後の客かもしれない相手がこれ?
やっぱり、ヨナに言ったことは嘘になりそう。
私はため息を着いた。
「あの?…僕、部屋間違えたかも知れません」
そう言って、そそくさと出ていった。
どこかで見たことがあるような顔。
誰だったかな…?
帰って来ない客。
どうしようかとヨナに電話しようとしたところで、またドアの開ける音。
…さっきの男だった。
「…すみません、ここ、僕の部屋みたいなんですけど?」
「知ってますよ?」
ニコッと笑ってそう答えて見た。
「……何か、手違いがあったみたいで。それで、その…」
思い出した。
最近人気のアイドルグループの1人だ。
「…要は、ご機嫌を取るつもりで、私を買われた人がいるみたいですね。あなたに内緒で…」
「……すみません」
あなたが謝ることじゃないのに。
「……すみません、お金は払います。…ですが、これで」
「前払いなんです。……大体ご機嫌取りなら、あなたに支払いをさせるわけがないでしょう?」
「……確かに……」
純粋なのか、鈍感なのか。
少し飲んでいたのか、顔は真っ赤になっている。
私は帰ろうかとも思ったけれど、何故かバッグに手を伸ばして、持っていたインスタントコーヒーを取り出した。
「飲みますか?…酔い覚ましに」
「え?」
私の提案に驚いている。
きっと帰ると思っていたんだろうな。
「…誰にも言いませんよ、コーヒーを1杯飲んだら帰りますから、……Jhopeさん?」
名前を言われて、顔色が変わった。
からかったつもりはないけれど、少し楽しんでいる自分がいた。