なないろの虹(BTS空想小説別館)

オルペン&アミペンなARMYです。空想小説を書かせてもらっています。

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あの夜から、約束通り、私は客を取らなくなった。


取れなくなった。


綺麗じゃない自分を再認識してしまった。

失った光。

逃げ出した私。

わざと汚して、惨めにさせて、逃げ続けた自分。


ホープ


また私のコーヒーが飲みたいといった。


あの言葉が頭のなかをグルグルと回っている。


「いのり?」


伯母が不思議そうに私を見ている。


「ん?、何?」


「ここにあったコーヒーの瓶知らない?」


「ああ、それなら……」

バッグの中に手を伸ばして思い出す。

あそこに置いて来てしまった。


……しまった。


あれ、店の売り物だった。

店の名前、入っているんだった…。


あの人にわかるはずがないよね。

大丈夫。

気にしてなんかない。

きっと、分からない。


チャリンと、入口のドアが開く音がした。

 

「いーのーりー」


ヨナだった。

胸を撫で下ろした。


「コーヒーっ!……聞いてよっ!店に変なお客がいてね。もうキモイったらありゃしない」


ヨナは思い出したのか体を身震いさせた。


ヨナは近くの雑貨店で働いている。手先の器用なヨナはそこで自分で作ったアクセサリーなんかも売っていた。


私は身震いしたヨナのその様子が可笑しくて、また笑いが止まらなくなった。


「今はお昼休み?、何か食べて行く?」

伯母はニコニコとしながら、ヨナに聞く。


「おばさんのホットクが食べたい!」


「ハイハイ」


私は伯母の隣で3人分のコーヒーを入れた。

豆を引いて、ゆっくりとお湯を注ぐ、コーヒーのいい香りが店内に溢れる。

静かな店内にこの香りが溢れていく、そんな時間、空間が好きだった。


「はい、どうぞ」


そこに伯母が焼いたホットクが加わる。

甘い香りとほろ苦いコーヒーの香り、私とヨナはカウンターに座って、ひとつの皿のホットクをわけながら食べる。


「……そうだ」


ヨナは持っていたバッグから、封筒を取り出す。

手術の日程を決めて来たと言う。