Lights:5
「この連帯保証人のところ、いのりか伯母さんのサイン貰ってもいい?」
「私が書くよ」
私はペンを取ると言われた場所にサインをする。
その後、伯母は買い出しに行ってくると店番を私に任せて出て行った。
カウンター席に2人並ぶ。
ヨナはあと少しでお店に戻らないとと言う。
「これ、プレゼント🎁」
ヨナは小さな可愛い柄の封筒を差し出した。
「なに?」
「……今までのお礼。……」
そういうとヨナは椅子をくるりと回した。
お互い向き合う形になる。
「……私がやらなきゃ行けなかったはずの事を、あんたに任せっきりで……ごめん。ごめんね、いのり」
そう言ってヨナは私を抱きしめた。
「……何、言ってるの。……自分がやりたいってそういったんだから。……いろいろと楽しかったよ」
ヨナの身体を引き離して、涙を拭く。
「いのり!」
「ん?」
「……今度はいのりが、いのりのために、いのりがやりたいことをして欲しい」
私のために。
私がやりたいこと。
そんなこと、何もないよ……
ヨナがくれたお礼。
綺麗な紫の花のビーズブレスレットだった。
「……そんな事、何もないよ……」
「これ、受け取って」
そして、またひとつ封筒をだすヨナ。
中には大金が入っている。
「……何?これ?……」
「もうとっくに私の手術代は溜まっていたんだけど。……これで、今度はいのりの目。……セカンドオピニオン、受けて欲しい」
左目のセカンドオピニオン。
もしも、視力か戻るなら、このお金で、手術なりなんなりして欲しいとヨナは言った。
そしてまた、優雅に泳いで欲しいと。
「……ヨナ」
「何?」
「これは受け取れない。……私はもうこのままでいいと思ってる。……それに、治るかどうかも分からないのに、こんな大金、使えないよ」
「……いのり?……諦めるには早いって!……少しでも可能性があるなら、やってみるべきよ」
「……それに……もう……、」
綺麗じゃない。
頭の中で木霊する。
自分が自分の意思でやってきたことなのに、後悔したところでもう戻ることはできない。
それもわかってしてきたこと。
親友のためと綺麗事を並べて、親友を持ち出して、自分の空虚を埋めたかっただけ。
でも、どんな相手とどんな事をしても、その空虚が埋まることはなかった。
自分の中にできた穴が、その度に大きくなっていくだけ。
「いのり」
ヨナはもう一度私を抱きしめる。
「……私が男に戻ったなら、あんたを絶対に幸せにするって約束するのに。
……もうそれも出来なくなる。私晴れて、正真正銘の女の子になっちゃうんだから。
……だから、早く誰かあんたを幸せにしてくれる人を見つけて。……そして、私が羨むくらい幸せになりなさい!」
私はヨナが女の子になると言った言葉が何故か笑いのツボにハマってしまい、涙を流しながら、笑っていた。
もう十分、今が幸せだよ。